虚数空間と玉葱とラブソング
Yは音楽の才能を持っている。
ピアノが小学生レベルで弾けてちょっとだけ管楽器が出来る自分からすると羨ましい。
習ったことがほとんどないというピアノを譜面なしで弾きこなすし(楽譜を読むのがはちゃめちゃに遅い)、無から突然DTMが使いこなせるし、私がある動画を作っている際既存楽曲の耳コピーを頼むと一曲15分で完成させてきた。
とにかく音程を捉える能力に長けているのである。
人の話し声も抑揚や音程で捉えているため腹立つくらい声真似も上手い。
ただ地声が低いので『ラブライブ!キャラクターたちが猥談をするシリーズ(妄想)(ダミ声)』を1人で繰り広げるのは本当にやめてほしい。
そんなYはDTMでの作曲を趣味の1つとしている。
その一環で、今年の初夏にVOCALOIDの鏡音リンちゃんとレンくんをお迎えした。
これで作曲の幅も広がるぞ、よっしゃ!と息巻くY。
しかし、深刻な問題が発生した。
Y、壊滅的に歌詞が書けなかったのだ。
人の言葉を抑揚と雰囲気で捉えているため、語彙力は5歳児。
既存の歌の歌詞さえめちゃくちゃに間違える。
aflatter0913-nattune.hatenablog.com
今日も「勢いでとにかく暗殺だ〜☆」と、南ことりと小泉花陽をスナイパーにしてしまっていた。
自作の歌詞など作れようはずもない。
リンちゃん達がやってきたその日、とりあえず曲を練り、それに合わせて作ってみた歌詞がLINEで送られてきた。
まぁひどいものだった。
初手、繋いだ手をぎゅっと握りしめた。
握手?
間髪入れず、君を守ると誓った。
早くない?
…とりあえず、ラブソングを作りたいらしい。
Bメロに差し掛かる。
デネブ、アルタイルとベガを探しはじめた。
どっかで聞いたことあんな。
泣かないでと自分に言い聞かせる。
うん。
そのうち笑った顔とか怒った顔を大好きになりそうだと思った。
既存曲をパクるな。
問題はサビだ。
力尽きたのだろうか。
こう記してあった。
「虚数空間 駆け抜ける玉葱」
これ何?
私はあいにく虚数空間に行ったことがないためわからないが、玉葱は空を駆けるのだろうか。
それを見て恋人たちが愛を囁きあったり、女子高生が黄昏に涙を零したりするのだろうか。
それとも、虚数空間での恋の描写はやはり繋いだ手で握手して君を守ると誓うようなものなのか。
跪いて指輪の箱を開く行為の虚数空間的な表現なのか。
Yは「この曲、夏の夜の星空をイメージして作ったんだ!」と言う。
私の脳内には広大な宇宙が広がっていたので、間違っていないのかもしれない。
何にせよ、リンちゃんにはじめて歌ってもらう曲がこれか?と思うとなんか腹が立ってきたため、丁重にやめたほうがいいよと伝えておいた。
もうすぐこの曲がフルコーラスで発表できそうなので、投稿できたらこのブログにも載せようと思う。
そしたら、虚数空間の玉葱のことを思い出して欲しい。