ポンコツ彼氏観察日記

愛すべき馬鹿の成長を見守る記録

北風と太陽とバカ


台風が近づいているらしい。


とはいえ、私たちの暮らす福岡は今回ルートから逸れているようで、要はあまり心配いらないらしい。


だからこんな悠長なことを言えるのかもしれないが、私は雨とか風とかを楽しめる人が好きだ。


もっと端的にいうとバカが好きだ。男女問わず。



例えば多少の雨風があるときにブツクサと文句を言ったり心配しすぎたりする人よりも、T.M.revolutionごっこができる人がいい。


勿論安全が第一だけど、どんなに気分を害したって死ぬときは死ぬ。


台風の時に具体的な緊急避難の用意と風の対策がきちんと出来ているなら、あとは天気で気分を害するよりもアホの方が楽しい。

私が低気圧で口が痛くなる(?)体質なため、尚更だ。


と、思っていた。



7月に福岡にも台風が上陸した。


私は筋金入りのバカだと自負していたため、同じくバカの友人と露天風呂に行った。


彼女は私の無二の盟友であり、


・ソシャゲでうっかり推しを引いた私が思わずラマーズ法呼吸になると「お母さんいきんで!」となんの打ち合わせもなくノる

・男子高校生のtik tokを探索して勧め合う

・推しの人生を背負う人生ゲームをする

・その最中私の推しが結婚してしまい絶望する

松坂桃李主演『娼年』をともに視聴し魂が共鳴する


など、私の人生に沢山の輝きをもたらしてくれた存在だ。


彼女のお陰で大学生活が豊かなものになった。



そんな彼女と組んでいれば、私は世界最強のありがちなバカ女子大生とか、限界OLでいられる気がした。


彼女と暴風雨の露天風呂で首だけ出すタイプの蒸し湯に浸かり、「これ晒し首じゃん」などと騒いでいる時は最高に楽しかった。



帰路でYから連絡があった。

アルバイトが台風で中止になり家で暇を持て余しているから、うちに泊まり映画でも観ないかという申し出だった。


たしかに私の当時の住処はそこそこその時の現在地からは遠くて電車が動くかわからなかったし、向かっている駅の近くに住むYの家に行くのは最適解に思えた。


それじゃあお菓子と飲み物を買って晩ご飯はコロッケ作ろうぜということで合意し、買い出しのため駅まで迎えに来て欲しいと依頼。

楽しい夜になりそうだぜと思っていた。



買い物を済ませて帰宅する。

そのときYが呟いた。

「鍵がない」



鍵がない。


どうやらどこかで落としたらしい。

ちなみに私は合鍵とかは持ってない。


締め出された午後9時。

両手にはクソバカ浮かれポンチハッピーセット(知育菓子とジャンクフードと飲み物)。

携帯の充電は風前の灯。


絶望とはこのことだ。



白状しよう。


私はバカが好きなのではなかった。


意図してバカやってくれる人が好きなのだ。

そして自分も意図してバカをやっていた。


目の前にいるのは正真正銘本物のバカである。

どうしよう。


鍵は私がクリスマスにプレゼントしたキーケース(ダイヤちゃんストラップ付き)に入れていたけど、この暴風雨では探すこともままならない。


冷えていく体。


家の前で帰宅難民になると誰が思うのか。

私は死ぬのか。



藁にも縋る思いでTwitterで助けを求めると、有難いことに数人の方が声をかけてくれた。


近くに住んでいる方の家に身を寄せることになり、感謝するとともにYの"""本気のバカ"""に思い上がりを恥じた。



後日見つかったキーケースには、ダイヤちゃんのラバストのもげた首がぶら下がっており、あの夜の凄惨さを物語っている。

一番の被害者かもしれない。



ともかく、バカはほどほどにしよう。